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清岡幸道のうつわ 

北の岬に感じたこと

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 若い時に読んだ沢木耕太郎のルポが一冊に纏められているものを古本屋で見つけた。
印象的だったのは根室や歯舞の北方領土周辺 海域で漁業を営む男達の話。 その漁師たちは「北方領土が返還されない事を聡明をあげて祈っている」という。

周辺には良質の昆布が豊富にあるのだが、ロ シア人には昆布を食べる習慣がなく放置されている。しかしその水域に踏み込めば拿捕されるので企業は手を出せない。 北方領土が返還されると大企業にすべてかっさらわれるのを危惧しながらも、漁師たちは腕と度胸、拿捕覚悟で昆布の密漁を続ける。そして結果的に昆布の希少価値が保たれている、という話。
なるほど。それ自体は矛盾した存在でありながら、既成事実として存在する矛盾の上に成り立った生活があるというのもまた分かる。 これに限らず、当然世の中には矛盾したものが沢山あるのだが、はっきり白黒つけないことで維持してきたものは多いように思う。
矛盾は歪みを蓄積する一方で、別の歪みを逃しているという側面があるのだと。
蓄積した歪を一気に取り除こうとして挫折。その為に膨れ上がってしまった大きな問題を畳みこんでいくしかなかったり。
それは近年の世の中に当て嵌めるまでもなく、ごく身近でも思い当たる事。
一筋縄ではいかない複雑な人間模様を面白く感じたのと同時に、「人間のしぶとさ」を感じた。






by corn7sk | 2014-07-17 17:17 | 生活