清岡幸道のうつわ 

福田さんの金継ぎ

「卒業しました」

福田ご夫婦がみえた。
独立以来、個展にはいつも足を運んでいただいている有り難いご夫婦。

ご夫婦にはかなり以前、僕の器を欠かしてしまったということで、修理を依頼された事があった。初めての金継ぎ修理であったがなんとか直した。それは決して満足のいくものではなかったが、ご夫婦はとても喜んで、それがきっかけになったのか、奥さんの方が金継ぎの教室に通う事になった。
それ以来ご夫婦が来られる都度金継ぎの話になり、知らない世界にただただ感心するばかりだった。
習い始めの頃から、数回に分けて、教材と銘打ってちょっと欠けたうつわを送った。
初めはこんなもの送るのは失礼じゃないかとも思ったが、欠けたりひび割れたうつわなど行き場もなく、金継ぎの役にたつのならと、なるべく形と色目の良いものを選び送った。ご夫婦からはこちらが恐縮する程、お礼を言われた。

それから数年たち、やっと卒業されたのだった。
福田さんから、袋に入った少し大きめの化粧箱を手渡された。

「どうぞ開けて見て下さい。」

箱を開けると、丁寧に包装されたうつわが十数個ほど並んでいて、その包みを開けると、見事に継がれたうつわが見えた。
それらは全て以前僕が送ったうつわだった。
欠けたうつわは美しく継がれた事で、もはや彼女の作品になっていた。
福田さんは謙遜されてたが、それは僕にはとても感動的な光景に見えた。

「本当にお世話になり、ありがとうございました。お預かりしていた器、お返しします。」

「えっ…」

当然、こちらは割れたものをあげただけなので戸惑いながらも丁重にお断りしたが、福田さんの自信作であるもの、金継ぎと共直しのものを一つづつ頂き、残りは持ち帰って戴くよう勧めた。

割れてなんぼ、というのがうつわ屋家業の商売文句だが、作り手の心情としては当然愛着をもって長く使って貰えるほど嬉しい事はない。初めて修理を依頼されて、使い込まれたうつわを修復した時に強くそう思った。

福田夫妻には本当に素敵な気持ちを頂いた。


感謝。






共直し(色漆での修復) 錆釉リム鉢
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金継ぎ 青澄マグ
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n107での二人展、お陰様で無事終了しました。
お運びいただいたお客様、本当にありがとうございました。
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by corn7sk | 2014-03-23 11:09 | 生活